広報・IR担当者の平均的な残業時間や休日出勤について

広報・IR担当者の平均的な残業時間や休日出勤についてこんにちは。広報・IR部門で10年働いている徳永です。

ホワイトカラー労働者の過労死や長時間労働が社会問題になっていますが、不思議と広報・IR担当者がそのような被害に遭ったという事例はほとんど耳にしません。

このことは「広報・IRの仕事は暇」ということを意味しませんが、ただ、広報・IR担当者の残業時間が恒常的に月100時間を超える、いわゆる労働問題になるようなことはまれだと感じます。

それは広報・IR業務の特性によるものと考えられます。

筆者は現在までに4つの会社で広報担当を務めました。その経験をもとに、残業と休日出勤の事情についてお話します。

職種別にみると広報・IRは残業が比較的多い

まずは筆者の経験をお話する前に、残業に関する調査データで見てみましょう。

残業37時間/月、休日124日/年

2013年に転職支援サイトDODAが行った調査に広報・IRの月平均の残業時間と年間休日数が出ています。

  • 平均残業時間:37.4時間/月
    残業が少ない順ランキングでは95職種中82位
  • 平均年間休日数:123.9日
    年休日数が多い順ランキングでは95職中37位

転職サービスDODA調査:全80業種、95職種別の残業時間調査

平均残業時間の少なさでは95職種中で82位となっているので、残業は多い職種と言えます。

一方で、平均年間休日は約124日で、多い順で95職種中で37位なので、休日の多さは平均程度と言えます。

つまり「残業は多いけど、休日はちゃんとある」と言えそうです。

ちなみに最も大変なのは「映像関連」や「編集、デスク」といった「クリエイティブ系」で、残業時間は50時間/月以上、年間休日数は100日/年程度となっています。

休日出勤については、広報・IR担当者は休日イベントで出勤することもありますが、閑散期にはしっかり代休が取れるので休みはちゃんとあります。

残業時間が多いのは、広報・IRの仕事は、「他部署や他社の都合に合わせて動かなければならない」という特徴があることと関係していそうです。

「相手に合せる仕事」ほど、ロスタイムが長くなるためです。

新聞社の広報は地味で静か

上記では統計データとして解説しましたが、具体的に筆者の広報で働いた体験談から残業時間や休日について紹介します。

筆者が最初に広報業務に携わったのは、中堅新聞社でした。

筆者は人事部を経て、入社3年目に広報室に異動になりました。

ほぼ定時に退勤できるラッキー職場もある

新聞社の広報は、社内でユニークな立場にあります。

新聞社は「取材する」側なのに、広報室だけは「取材される」側にあるからです。

新聞社は「取材する」ことで収益を上げているので、「取材される」立場の広報室はおカネを生まない部署とみなされていました。

そのためもあってか、広報室はとても地味で静かで、残業をすることはまれでした。

残業がほとんどないので残業代も発生しません。

また他の業界の広報担当者にも知り合いは大勢いますが、同じようにほぼ残業がない広報部で働いているという人も多く知っています。

時にものすごく忙しくなるのが広報の仕事

そんななかでも、広報の仕事がすごく忙しくなることもあります。

新聞社の広報室が騒がしくなるのは、会社が不利な状況に追い込まれたときです。

例えば自社の新聞が誤報をしてしまった場合、お叱りの電話が鳴りっぱなしになります。このときは秘書室や経営企画室からも応援を頼み、とにかく丁重にお詫びし続けました。

新聞販売店の従業員が暴行事件を起こしたときも、広報室は対応しなければなりません。

新聞販売店は、新聞社とはまったく別の法人で、資本関係も人事交流もありません。

出版社と書店の関係に似ているのですが、世間は「新聞販売店は新聞社の営業所みたいなものだろ」と考えています。

そこで広報室でも「うちの不祥事」としてとらえ、平謝りします。

広報室は、会社の有事に備え、「一般的な誤報は社員対応」「名誉棄損で訴えられそうな深刻な誤報は広報室長対応」「関係者不祥事は社長のコメント発表」といった警戒レベルを設けていました。

鉄壁の守りを築くことが日々の仕事でした。

病院の広報担当者は走り回る

筆者は新聞社を退職後、フリーの編集を経て、ベッド数80床の中規模の民間病院の広報の仕事に就きました。

病院の広報の仕事の最終目標は、患者の数を増やして手術件数を増やすことでした。

手術は病院の大きな収入源ですので、そういった意味では病院の広報は、「おカネを生み出す広報部門」という珍しい特徴があります。

「営業は会社の商品を売り、広報は会社のイメージをつくる」というのが一般的な理解ではないでしょうか。

しかし病院は、露骨な営業活動が法律で禁じられているので、広報活動という名義で営業活動をするのでした。

自社の「良い医者」をPRする宣伝活動

ではどうやって病院の広報は、患者の数を、さらに手術件数を増やしていくのでしょうか。

それは患者の立場になって考えてみると分かります。もしあなたがいま、お腹を切り開いて病変を取り除く手術が必要になったとします。そのとき、どの病院のどの医師に切ってもらうか、想像できますか。

多くの人は、総合病院だったり大学病院だったり、とにかく大きな病院をイメージするのではないでしょうか。執刀医については、ほとんど知識がないはずです。外科医は有名人ではないからです。

この実態こそが、私が勤めていた病院の理事長の狙いでした。

この理事長はこう考えたのです。

「患者は本当は、信頼した医者に腹を切ってもらいたいと考えている。しかし実際は、どんな経歴を持っているのかすら分からない医者に、自分の内臓を預けなければならない。

だとしたら、『うちの病院の医者はとても優秀ですよ』と宣伝すれば、手術が必要な患者がじゃんじゃんうちに入院するようになるじゃないか」

「小さな広報」が重要

病院の広告や宣伝は、法律で厳しく規制されています。例えば自動車メーカーは「新型ハイブリッドシステムで燃費が3割向上」といった広告を、テレビでも新聞でも雑誌でも打つことができます。

しかし医療機関が「当院の○○医師は10年連続で手術中の死亡事故ゼロを達成」と宣伝した瞬間に、保健所と厚生局の職員が病院に飛んできます。

そこで、筆者が勤務していた病院の理事長は、広報担当の筆者に「ローラー作戦」を指示しました。地域の町内会の会合に出向き、「病気予防講座」を開くのです。

筆者はまず町内会長の自宅を訪問し、「次回の総会のときに、1時間ほどお時間をいただけないでしょうか。うちの医師が無料で講演いたします」と依頼します。

どの町内会長も、ふたつ返事で了解してくれました。超高齢社会の日本では、いまや「町内会」=「老人クラブ」なので、町内会の会員たちは病気の知識を知りたくて仕方がないのです。

ミニミニ講演会には、筆者が病院車を運転し、後部座席に医師を乗せて出向きました。効果はてきめんで、講演が終了するとおじいちゃんやおばあちゃんが医者と筆者を取り囲み、「胃内視鏡検査の予約を入れたい」「かかりつけ医になってほしいが、どうしたらいいのか」と質問攻めにしてくれました。

医師は夜に話したがるため広報に休み無し

この病院での広報の仕事は、新聞社の広報より忙しかったです。

なにしろ広報担当は筆者しかいませんでした。なので、筆者が十数人のすべての医者にインタビューを行い、その医者がやりたい医療や、その医師の得意分野における診療報酬が高い治療を聞きだして、「その患者を増やすための作戦会議」を開きました。

同じ診療科の医師でも「やりたい医療」はまったく異なるので、インタビューは個別に行わなければならないので、手間がかかりました。

しかも日中は、医者は外来や手術や入院患者対応に追われているので、医師とのコミュニケーションは必ず残業になりました。

ときには当直の医師の話し相手にならなければならず、そうなると退勤時刻は夜9時10時になります。多くの医者は、医者や看護師や患者ではない人と医療について語りたがっているなと感じました。

サービス残業は当然という企業体質があると広報も残業だらけ

しかし、残業代は一切出ませんでした。また筆者も、1回も残業代を請求したことはありません。それは、病院の中における広報担当の地位が確立していなかったからです。

広報活動に理解してくれた医者や看護師もいましたが、それは少数派で、大半の医療従事者からは「現状でも仕事でへとへとなのに、まだ患者を増やす気なの? 余計なことはしないでほしい」という目で見られていました。

看護師ですら、実際の残業時間の半分くらいしか残業代をもらっていないのに、「遊んでいるようなもの」と見られている広報担当者が残業代を請求することはできませんでした。

また「病院職員って給料が良さそう」と思っている方がいましたら、それは誤解です。医師は超高給取りで、看護師も普通の高給取りですが、病院事務職は低賃金に泣かされています。

居酒屋の支払いは「変則ワリカン

例えば医者と看護師と広報の計3人で居酒屋に飲みに行ったとします。そのときの会計金額が、1万8千円だったとします。このとき医者は黙って1万円札を差し出します。看護師は財布から5千円札を取り出します。広報は2人からおカネを受け取り、自分の3千円を足して、レジで支払います。

この「変則ワリカン」は、年齢とは関係ありません。職種で負担金額が決まるのです。

なので、この3人の中で広報が最も年齢が高くても、おカネを集めたりレジで支払ったりする雑務を請け負わなければなりません。

病院での医療行為は、役割分担が厳密に決められています。その上下関係は、プライベートな時間にも適用されるのです。

また、休日に病院スタッフでバーベキューをしよう!となったときも、食材の買い出しから医者の送迎、木炭の火起こし、紙皿と割り箸の配布、肉と野菜の焼き加減の調整、そして後片付けまで、広報や医療事務がこなさなければなりません。

医者と看護師に気持ちよく仕事をしてもらうために

しかし筆者は、居酒屋での飲みやバーベキューのセッティングを、広報の仕事の一環だと思っていました。それは、「病院の最大の商品は医者と看護師」だからです。

自動車メーカーの広報パーソンにとって、PRすべき商品はもちろんクルマです。クルマを売ることで、給料がもらえるからです。

病院で売るものは、医者や看護師たちの技量です。だから病院の広報担当者は、医者と看護師を丁重に扱わないとならないのです。

筆者が医者の愚痴を聞いてあげたり、看護師にたくさん飲んでもらって酔っ払ってストレスを発散させたりすることは、いずれも「患者に優しくしてもらう」ために必要なことでした。

それは、広報担当者が、「生き死に」の世界で厳しい仕事をこなしていく医療従事者たちの姿を間近で見る立場にあるからです。また、病院のロビーに設置してある「患者の声」ボックスを最初に開くのは、広報担当者です。そこには、「病気を治してくれてありがとう」という言葉がたくさんあります。

こういう仕事を続けているうちに、自然と「医者と看護師に優しくしなきゃ」という気持ちがわいてくるのでした。

病院の広報の仕事は、給料以上に「得られるもの」がたくさんありました。