広報・IRの仕事で人間関係が辛いパターンと人間関係構築のコツ

人間関係が上手くいかない広報・IR担当者へ。辛いパターンと人間関係構築のコツこんにちは。広報・IR部門で10年働いている徳永です。

仕事の悩みと人間関係の悩みは切り離せないものだと思います。

アドラー心理学では全ての人間の悩みは突き詰めると人間関係に帰結すると言われているほどです。

本記事では、人間関係が上手くいかなくて辛いと感じている広報・IR担当者のパターンと悩み解消のコツについて書いてみました。

特に20代後半〜30代から人間関係に悩み始める人が多い

広報・IRの最大の使命は、自社の製品やサービスや経営状況を世間に伝えることです。

魅力的な事業を行い、公明正大なビジネスを展開している会社であると認知してもらうことが、最終目標です。

ですので若い広報・IR担当者は、とにかく自社のことに精通しようと懸命になります。

ところが経験を積み年齢を重ねて30代ごろになると「この仕事はそれだけでは済まない」と気付きます。

広報というキャリアの将来を大きく左右するのは30代の人脈と人間関係です。

20代後半くらいからのある程度の経験を積んだ広報・IR担当者が、次に取り掛かる仕事は、良好な人脈形成です。

この時代に築いた信頼関係は、将来のビジネスに多大な影響を及ぼします。

しかし万人が顧客になる広報・IR担当者は、「人間関係が辛い」と感じることがあります。

広報・IR担当者がどんなことで人間関係で辛くなるのか、「苦手」と感じる人と信頼関係を築くときのコツはなんなのでしょうか。

広報・IRが社外で人間関係で悩む例

営業担当者が「広報・IR担当者が人間関係で悩んでいる」と聞いたら、「どうして?」と感じることでしょう。

おカネを出してもらうためのシビアな人間関係づくりに比べたら、「情報を流すだけでいい人間関係なんて、たかが知れている」と思うかもしれません。

でも人間関係づくりはあまり必要ないというのは広報・IRの業務を知らない人の言うことです。広報・IRの人間関係はそんなに単純ではありません。

広報・IR部門の業務を遂行するためには、濃厚な人間関係が必要となります。

広報・IRの人間関係の対象は「自社に関心がない人」も含みます。

広報・IRでの人間関係の難しさは、営業パーソンのそれとはそもそも種類が異なるので、「どちらがより大変か」という議論は成立しないのです。

投資家は社長より恐い存在

IR担当が悩む人間関係その1は、投資家たちとの関係です。

IR担当者は、会社の業績を知ってもらうためにあらゆる手段を使って、投資家たちにアプローチします。

IR担当者にとって、投資家は社長よりも恐い存在です。

株を少し持っているくらいの個人投資家ももちろん大切ですが、大株主となると人間関係1つで自社の株価を大きく変動させる可能性を秘めています。

社長に叱られても、謝れば済みますが、投資家たちを怒らせたら、資金が引き揚げられて株価は暴落し、銀行は融資を停止し、最終的には会社が倒れてしまいます。

それは大げさ過ぎるケースとはいえ、IR担当者は、投資家にそっぽを向かれないようにしなければなりません。

そのために、自社の業績を正確に適切なタイミングで提供する必要があります。

もし決算内容が悪ければ、その発表と同時に「なぜ業績が落ち込んだのか」という理由を上手く伝える必要があります。

こうした「投資家との対話」は、IR担当者の神経をすり減らすことでしょう。

メディアの記者や編集者との人間関係に悩む

メディアの記者やプロデューサーは、広報担当者にとって「神のような存在」です。

特に大きなメディアで自社の事業がニュースになることは、広報担当者にとって「大金星」で、会社に戻れば「よくやった!」と絶賛されます。

しかしそういった有力メディアの記者やプロデューサーのことは、他社の広報担当者たちも狙っています。

例えば、冷凍食品メーカーの広報担当者が、自社が開発したユニークな「ギョウザ」を、なんとか経済紙の「注目商品コーナー」に登場させたいと考えていたとします。

しかし人間関係構築と情報提供の詰めが甘く、競合会社の「冷凍パリパリ春巻き」が先にそのコーナーに掲載されてしまいました。

そうなったら、ギョウザの広報担当者がいくら羽つきギョウザをプッシュしても、その経済紙で紹介されることはしばらくないでしょう。

経済紙は、世の中の様々な商品を紹介しなければなりません。話題性などを勘案して、視聴者にウケる内容を伝えていく必要があります。何度も同じテーマを載せることができないのです。

では、経済紙記者はなぜ、「ギョウザ」ではなく「春巻き」を選んだのでしょうか。

勝負に負けたギョウザの広報担当者は、恥を忍んで記者にその理由を尋ねなければなりません。

なぜなら、上司に「なぜ他社の春巻きが紙面で紹介されて、うちのギョウザは載らないんだ」と詰め寄られることは明白だからです。

メディアの記者や編集者たちとの人間関係は、広報担当の生命線といえるでしょう。

だからストレスや悩みの元にもなるのです。

広報・IRで上司との人間関係が辛い例

広報・IR担当者に人間関係ストレスをもたらすのは上司というケースも多いです。

特にキャリアを積んできた30代以降の担当者にとって、上司との人間関係は悩みのタネです。

上司にとっては、20代社員にきつく詰め寄ってしまうと退職される危険がありますが、家族ができ守るものもある30代は逃げ道がないので、しごき甲斐があります。

30代以降の広報・IR担当者は、上司から次のような期待をかけられています。

  • 若い社員の育成
  • プレスリリースの発行数を増やす
  • イベントの単独立案をまかせる
  • メディア登場回数ノルマの達成
  • 経営陣向けプレゼンに耐えうる企画案、資料作り
  • 稼げる広報事業の企画・展開

上司からの激しいタスク振り

広報・IRの担当者は人数があまり多くない会社も多いので、そういった会社だと上司からのタスク振りが激しいこともあります。

例えば、筆者が働いていたある企業の広報部門では「プレスリリース100本ノック」が行われていました。

1カ月間に100本のプレスリリース原稿を作成するといったものです。

出勤日数が1カ月20日だとすると、1日当たり5本のネタを探し、文章にして、資料も添付しなければなりません。

当然のことながら、どんなに規模が大きい企業でも1カ月に100個の新商品を生み出すことは不可能です。

そこで、「角度を変える」という技を繰り出す必要があります。

例えば、家電メーカーが最新式のコーヒーメーカーを発売したとします。先進機能をPRするプレスリリースはすぐに書き上げることができます。しかし月100本を作成するには、これで10本種類の原稿を書かなければなりません。例えば次のようになります。

<新型コーヒーメーカーの10個のプレスリリースネタ>

  • インスタントコーヒーも本物のコーヒー豆も使える「ハイブリッド」機能
  • チタンをふんだんに使った軽量設計。なぜ「難しい材質」であるチタンをコーヒーメーカーに? 工学博士へのインタビュー
  • 有名家具販売店とのコラボ企画
  • テレビコマーシャルにベテラン俳優5人を起用。それぞれに家庭で使っていただいた
  • 産地直送のプレミアム・コーヒー豆プレゼント
  • デザインを依頼したイタリアの著名カーデザイナーへのロングインタビュー
  • コーヒーメーカーを使った新生活の提案
  • 大手コンビニが、店内イートインコーナーでこのコーヒーメーカーの無料使用サービスを開始
  • 主婦100人に聞きました「当社のコーヒーメーカーと、他社のコーヒーメーカー、どっちのコーヒーがうまい?」
  • 医学博士が監修「コーヒーを飲んで健康に」キャンペーン

これだけのアイデアを出すだけでも大変なのに、これを実行に移さなければならないのです

上司はさらに、プレスリリースへの反応を尋ねるでしょう。

プレスリリースは、発行から2日間以内に90%以上の反応が集中します。

つまり3日経って数件の問い合わせしかなければ、1週間後、1カ月後はもっと悲惨な状況になっているでしょう。

30代広報担当者から「問い合わせゼロ件」の報告を受けた上司は「お前のプレスリリースがつまらねえからだよ! 死ぬ気でアイデアを出せ!」と叱咤激励するでしょう。

広報・IR職が同僚との人間関係が辛い

もちろん同僚との人間関係で悩む広報・IR担当者も多いでしょう。

同僚とのメディアの奪い合い

大企業になればなるほど広報・IR担当者たちは同じ部署とはいえ、それぞれがまったく別の案件を抱えています。

そうなると、同僚との間で敏腕記者の奪い合いになります。

正確で丁寧な記事を書いてくれる記者は、広報・IRパーソンたちのアイドルです。

しかしメディア側としては、ある会社の製品を取り上げたら、一定期間を置かないと同じ会社の商品は扱いにくいものです。

その媒体に頻繁に同じ会社の製品が載っていたら、読者や視聴者から「癒着があるのでは?」と疑われるからです。

公正中立を是とするメディアにとって、そのような噂は命取りになりかねません。

広報・IR担当者たちは、他社の広報パーソンと競うだけでなく、同僚とも椅子取りゲームを展開しなければならないのです。

さらには当然のように同僚との出世競争もありますよね。

切磋琢磨できる良い関係が築ければいいのですが、なかなかそうもいかないケースのほうが多いでしょう。

同僚との人間関係がギスギスするのは当然です。

他部署の人との人間関係が辛い

広報担当者は、製品やサービスを紹介するので、開発担当者や営業パーソンと連携しなければなりません。

IR担当者は経理や財務の担当者、または経理担当役員と頻繁に連絡を取り合います。

隣の部のスタッフは敵!?

開発者や営業パーソン、経理社員たちは、広報・IR担当者たちを、業務の妨害者のように扱うこともあります。

例えば筆者が働いていた会社では、広報部門と他部署の人たちには下記のような軋轢があることがありました。

開発

開発
すでに販売にこぎつけた製品は「過去のモノ」だよ。次の製品の開発で忙しいんだけどなあ。
広報

広報
もっと開発段階の苦労話を聞かせてほしい。ストーリーづくりが広報のセオリーなんだから。

営業

営業
広報担当者に「良い話」をもらしたら、プレスリリースのネタにされちゃう。そうなったら営業トークがかすんでしまう。製品がバカ売れしたとき「広報活動のおかげ」と言われたくない。
広報

広報
営業と広報の最終目標は同じ「自社の製品で社会貢献」。営業の実績を横取りする気なんてないのに。

経理

経理
決算の数字なんて、社長と経理担当役員が把握していればよい。
広報はなんでも部外者にしゃべっちゃうイメージ。なんか信用できない。
広報

広報
投資家は経理社員がはじき出した数字を知りたい。もちろん社内秘の取り扱いくらい承知してるよ。

こういったように、営業社員や経理社員も、広報活動に積極的に協力する気のない人も多くいます。

広報・IR担当者は、そういった非協力的な他部署の人間にも、お願いをして仕事を一緒にしてもらう必要があるのが辛いところです。

広報・IRの担当者が人間関係に悩まないコツ

特に新人を抜けた頃の20代後半以降は、どの部署でも調整役になります。中間管理職と新人社員の板挟みにあうこともあります。

また広報・IR担当者は、「もっと情報を寄越せ」と迫ってくる社外の人たちと、「情報公開もほどほどにな」という社内の板挟みにもあいます。

だから広報・IR担当者は、いつも人間関係に疲れています。

筆者の考える、そんな人間関係のストレスを解消する方法の1つは、

「半分は会社のため、半分は消費者のため」という意識を持つことです。

情報取り扱いのプロになって信頼されよう

広報・IRは、情報の「ハブ」のような存在です。広報・IRを起点に、情報が流れていきます。

人間関係の板挟みに合った時、全ての人に好かれるというのは無理だという諦めも大切です。

「教えてほしい」という人と、「他には言わないでほしい」という人がいたら、広報・IR担当者は、情報を提供するかどうかを決断しなければなりません。

もし「教えない」という選択をしたら、「教えてほしい」と言った人に、教えられない理由を丁寧に述べましょう。

そして、もしそれで納得してくれなかったら、「すべての人が満足できる情報提供の方法はない」と自分に言い聞かせてください。

このような毅然とした態度を貫けば、少しずつ理解してくれる人も増えるはずです。

情報を扱う人は、いつも厳しい立場に立たされます。

それは広報・IR担当者の辛さでもありますが、「辛いと実感できるということは、良い仕事をしている証拠」と割り切ることも大切だと思います。