アパレル販売員の売上ノルマの厳しさ

本記事では、アパレル販売員で仕事が辛いと感じる理由の1つである売上ノルマについてです。

アパレル販売の売上ノルマとは、その悪影響、なぜ辛いのかを、アパレル販売員として働いてきた筆者の経験を踏まえて解説します。

アパレル販売員のノルマとは

華やかでおしゃれなイメージのあるアパレル販売職ですが、各店舗には「売り上げノルマ」が存在します。店として、「今月は〇〇〇万円以上を売り上げるように」と本部から通達が来るのです。店長はそれをもとに、「あなたは〇〇万円、あなたは〇〇万円売り上げてね」と販売員個人に分けていきます。店では「ノルマ」とは言わず、一応「個人の売上げ目標」と呼ばれていますけれども、実際はノルマです。そして、そのノルマを達成するのは結構キツいのです。

店舗ごとにランキングを発表して競わせているブランドも珍しくはありません。自分の働くショップの売上げが上位に入れば、「ご褒美(金一封)」が出ることもあって、ショップ店員はノルマを達成することに一生懸命になります。しかしノルマというのは、達成したら次からは増加することもあるのです。100%の力でやっとクリアしたら、次は110%の力を出すように要求されてしまうわけですから、結局いつまでも、ノルマ達成のために苦しい思いをする状態が続くのです。

現在のようにIT技術が発達していると、毎日の売り上げも、ネット上で各店舗が共有できるようになっていて、「ウチはまだ20万円なのに、××店はもう50万円を超えている」などと、店長がパソコンをのぞき込んで慌てていることもあります。あるとき、「大変ですね」なんて声をかけたのですが、店長は顔色を変えて怒り出しました。「何のんきなことを言ってるの!あなたが売らないからでしょ」と。無理もありません。売上げが伸びずに叱られるのは店長ですから。店長だって怒りたくなくても、販売員個人にもっと頑張れとプレッシャーをかけざるを得ません。

私が最初に就職したあるアパレルブランドでは、最初の日に「自分で売り上げ目標を立ててください」と言われて、「〇〇万円」と適当に書いていたら、店長はのぞき込んで「もっといけると思うよ。その倍はいけるよ、キミなら」などとささやくのです。いや、私は今日から働くのですから、どれだけ売れるかわかりませんよと言いたくなったことがあります。それほど店長の頭の中は「売り上げ」でいっぱいです。

バックヤードにグラフが貼ってあって、それぞれの販売員の売上げ目標とどの程度達成できたか、一目でわかるようになっている店もあります。新人の店員とか、アルバイト店員ならそれほどプレッシャーではないのですが、店長や主任クラスの人、古株の人はあまり売り上げられないと恥ずかしいのです。今月のノルマが達成できそうにないときは、友達に片っ端から連絡して買いにきてもらうこともありますが、それも限度があり、結局は、「自腹」で商品を買取ることになります。ファッションが好きとは言え、必要とは思わない服を買わなくてはいけないのは、辛いです。このブランドの服を買うために私は働いているのかな、と思ってしまいます。

人間関係に影を落とす販売ノルマ

販売員にとって、ノルマがストレスになる理由は3つあります。

まず、1つ目には売れないことで自分が悲しいこと。他の人にも迷惑をかけているし、私ってこんなにダメだったのかしら、と自己嫌悪に陥ってしまうことです。

2つ目に、ノルマによって他の販売員との人間関係がもつれることです。お客さんがショップに入ってくると、販売員はにこやかに「何かお探しですか?」と近づいて行きますが、これは「早い者勝ち」です。

最初に声を掛けた人が、そのお客の売上げをゲットできるのです。しかし、先輩がいたら、少しは遠慮しなくてはいけません。以前私が働いていたショップでは、お客さんへは先輩が先に行くことが暗黙のルールでした。

ですが、ある日、先輩がお客さんに近づこうとしたら、そのお客さんが私の方へ近寄って商品について質問をしたので、そのまま応対して販売したことがありました。

しかも多額の買い物をしてくれたのです。あとで聞いたことですが、先輩はとても不機嫌になって、私のロッカーを足でバンバンと蹴っていたそうです。私のせいではないのにと悲しく思いました。

3つ目に、職場全体の雰囲気が悪くなることです。自分のノルマを達成しても、他の店員が売り上げないと、店全体のノルマが達成できません。

結局みんなで不足分をカバーしなくてはいけなくなりますから、売り上げが少ない店員への風当たりが強くなるのです。売り上げの少ない店員を仲間はずれにしたり陰口をたたいたり、というショップもあります。

上手く販売できない、という仕事上の悩みが「いじめられる」という人間関係の悩みに転化しやすいのが、アパレル販売員です。いじめられて、ショップに行くのが嫌だと言って辞めた販売員を何人も知っています。特に女性だけの店舗で多いようです。

しかし、日曜日や祝日は、お客さんが多いですから、先輩に遠慮などしているヒマはありません。商品を買ってくれそうな人を探して、自分から積極的に声を掛けます。

そこでは、店員同士の女の戦いが繰り広げられます。ひとりでも多くのお客に1枚でも多く服を売って、自分の売上げ目標を達成しないといけないのです。

私は、母親と一緒に来ている人に声を掛けるようにしていました。

なぜって母親がお金を出すことが多く、結構な割合で買ってくれるからです。さらに私は、よく来るお客さんは名前と顔を覚え、「お客さんノート」を作って記録していきました。顧客はショップが発行しているポイントカードを持っているので、そのカードを見て名前を自分の小さなノートに書いて、売った品物を記録しておくのです。

会話の中で知った情報があったら、それもメモしておきました。たとえば学校や会社の名前、好きな色などです。次にそのお客さんが来てくれたら、まるで以前からの友達のように「あら〇〇さん、こんにちは」と声を掛けます。

先輩の店員さんには「あの人は私の友達なんです」と説明します。私は、この方法で売上げを伸ばしました。でも、売上げが伸びすぎるとそれはそれで先輩からにらまれるので、結局どちらにせよ苦しいのですけれども。

ノルマはお客さんのためになってるの?

ノルマがあるからがんばれるという面もあるのですが、果たしてこれはお客さんのためになっているのかな、と疑問に思うことはしばしばです。

たとえば、お客さんが来たら、販売員同士で目配せをして「あなた、行く?」「あの先輩がいるから無理よ」というような会話を「目」でします。敏感なお客さんは何となく気配でわかるのか、その段階で出て行ってしまいます。

以前いた先輩は、お客さんが店に入ってきたら逃さないように、すぐに話しかけていましたが、お客さんが「見ているだけですから!」と怒ってしまったケースもありました。

また、お客さんが買うかどうか迷っているときに、「絶対お似合いです。すごくお似合いです」などと、お客と商品をほめたたえるようなセールストークを展開している販売員もいますが、私が見ていると全然似合っていない、と思うことも多々あります。

お客さんは落ちついて商品を選びたいので、販売員はそのお手伝いをさりげなくするのが本来の仕事でしょう。しかしノルマがある以上、達成しなくてはなりません。

ノルマが達成できないときは、店長から叱られてツライです。同僚や先輩との競争も、人間関係の軋轢もツライです。

しかし、私はいくつかショップを経験したからわかるのですが、ブランドによっては、ノルマが緩やかなところもあります。

ブランド全体が好調なのであまり売上げをキツく言われないところや、店長の性格がサッパリとしているので細かい文句を言わないところもあります。

リーダー格の店員さんが大らかで人情味のある人だと、他の人の不足分を、みんなでカバーしようと言ってくれて、逆に人間関係がとても良くなります。どうせ働くなら、こういうショップを探して楽しく働きたいものです。