未経験から広報・IRに転職する難易度と戦略

30代で未経験から広報・IRに転職する難易度と戦略広報やIRの仕事をしたいと考えている人は意外に多いようです。

広報・IRの仕事は、

  • 会社を代表して取材を受けたり、新製品を世界に向けて発表する仕事
  • 会社パンフレットや映像を作るクリエイティブな仕事
  • イベント企画や実行など派手で華やかな仕事
  • 会社としては生命線でもある株主との関係作り

など、クリエイティブでやりがいのある世界です。

広報・IRの未経験者が、転職でこの世界に飛び込むことはできるのでしょうか。飛び込んだとして、通用するのでしょうか。

未経験での広報・IRの転職事情をみてみましょう。

未経験で広報・IRに転職する難易度について

未知の分野に転職するのは、どの職種でも困難をともないます。

では未経験で広報・IRに転職する難易度はどうでしょうか。

まず広報とIRでは仕事内容が大きく変わるため、難易度も異なりますので、それぞれ別に解説します。

広報の業務内容と未経験転職の難易度

広報には例えば下記のような業務の求人があります。転職サイトで「広報」で検索をして出てきた求人の仕事内容の一部です。

  • イベント・展示会の企画・運営
  • WEBサイト運営、SNS運用によるPR
  • 会社資料の作成、紙チラシなど広告作成、DMや案内状作成
  • マーケティング企画
  • 「事業推進」「経営企画」「IR」など様々な業務
  • ニュースリリース配信
  • 社内報の制作

純粋な意味での広報活動とは、自社の活動情報をニュースリリースで伝えたり、メディアにプッシュして掲載してもらうことですが、見ていただくと分かるように、広告宣伝やマーケティング業務を広報で担当している会社も多いです。

特に中小企業は従業員が少ないので、部署によって細かく分業せずに、幅広い業務内容をこなせる求人が多いでしょう。

また会社によっては、ほぼ販売や営業に属する業務を行う求人もあります。そのため、応募する求人を選ぶ際には、入社後に担当する業務に関してしっかりと確認をしておくことが必要です。

ただ、広告宣伝と広報は、お金をかけるかどうかの違いはあれ、「自社の魅力を社会にたいしてアピールしていく」といった視点では同じ目標をもった仕事です。

ですので未経験で応募するのであれば、自分が最終的にやりたい仕事を見据えつつ、まずは広報関連の仕事のキャリアを積むことを優先して求人を選ぶのも良い戦略です。

いきなり理想のやりたい仕事を目指して求人を選ぶと、未経験の場合、応募できる求人がかなり減ってしまっていつまでたっても転職活動が終わらない可能性もあります。

未経験でIR職種に転職する難易度

一方でIR業務への未経験転職はどうでしょうか。

Investor Relationsは、自社の株主との関係作りのことで、決算発表の取り仕切りや大手株主企業との関係作りなどが業務に入ります。

IR業務は、広報・広告宣伝の仕事よりも、専門的な知識やスキルが必要です。

また、求人を出している企業は基本的に上場企業のみです。

そのため、IR業務担当をピンポイントで募集求人に未経験で応募するのはなかなか難易度が高いと思います。

どちらかと言うと、経営に直接携われる経営企画系の総合職の求人に応募して、社内で経験を積みつつIR部門への異動を狙うのが良いかもしれません。

広報・IRに転職するメリット

総務や経理、営業、企画で働いている人で、「いまの仕事を定年まで続けるのもなあ」と不満に感じていたら、広報・IRの世界に挑戦するメリットはあるかもしれません。

躍動感あふれ、アクティブで、なおかつ人の心に関わる仕事

特に総務や経理などの事務仕事を退屈に感じてしまい「ルーチンのない躍動感あふれる仕事」を求めている人が、広報・IRに転職をするメリットを感じられるでしょう。

製品やサービスのイメージアップを図る広報業務と、株主や投資家に経営理念を伝えるIR業務は、とてもダイナミックで「人の心」に訴えかけるクリエイティブな仕事です。

例えば、最近の自動車のテレビCMは、あまり車体のスペックや見た目を強調しません。むしろ「この自動車を買うとこんな生活を送ることができますよ」という見せ方をします。

かつて自動車を買う人は馬力やデザインを重視していましたが、いまは豊かな生活を送るためのツールとして自動車を買う人が多くなったからです。

また、同じ経営活動の結果でも、どのような伝え方を株主や投資家にするのか次第で、自社の株価は上がったり下がったりします。

事実としては、「事業撤退」だったものも、「上手く損切りをしてコストカットをした」という風に見せることもIR担当者の手腕次第では可能なこともあるのです。

広報・IRの働きによる見せ方次第で自社の業績に大きな変化が得られます。

「自社の魅力をどのような方法や見せ方で伝えていくのか」を考えて実行に移すといった退屈さとは程多い業務といえます。

広報・IRに転職するデメリット

それでは次に、広報・IR未経験者がこの仕事に就くデメリットを考えてみたいと思います。

下から目線の仕事に慣れなければいけない

広報・IRパーソンには、仕事で関わる人に『下から目線』で接することが求められがちです。

広報・IRが主に仕事で関わる人とは、自社内のスタッフ、メディアの担当者、消費者、株主・投資家です。

具体的に各仕事上の関係者にどのように接するのか例を見てみましょう。

広報・IR担当が関係者に接するべき態度

仕事上の関係者こういう気持ちで接するべき
社内営業営業的アプローチとは異なるPRをしたいので、
顧客リストを見せていただきたいのですが。
開発者製品やサービスの詳細について教えてください。
できれば関連資料を見せてください。
経理当社が2期連続で減収になった要因はなんでしょうか。
マスコミ発表しても構わない範囲で教えてください。
新聞記者
テレビ局関係者
ぜひうちの商品を貴メディアで取り上げてください。
この情報は他社には教えていないので、大きく扱ってくださいね。
消費者
ユーザー
いつも当社の製品をご愛顧いただきましてありがとうございます。
このたびの不具合は大変申し訳ありませんでした。
すぐに対応させていただきます。
株主・投資家当社の業績は今期赤字となっておりますが、これは長期的な経営戦略によるもので、、

他人からお願いされる仕事が多い職種に慣れた人が、広報・IRに転職をするとこの点が辛いかもしれません。

営業が長い人は苦労するかも

「すべての人に下手に出なければならない」という広報・IRの仕事はとてもユニークです。

例えば営業職では顧客にはいつも頭を下げていますが、商品に問題を見つけると、企画・開発陣に「こんなんじゃ売れないよ!顧客目線で製品をつくってよ」と強硬姿勢に打って出ることがあります。

営業マンは「社員の給料を稼いでいるのは自分たちだ」という自負を持っている人も多いためです。

営業が長かった人が、初めて広報・IRの仕事に就くと、「頭の下げ方の違い」にとまどうかもしれません。

営業マンは、購入してくれそうな顧客にはとことん頭を下げますが、購入見込みがまったくない人は無視します。

ノルマ達成のためには、見込みのある顧客にどんどんアタックしていかなければならないので、営業では「無視」はやむ得ないのです。

しかし広報・IR担当者は、直接の利益に貢献しない相手や自社に敵意を持つ人にもきちんと誠実に対応しなければならないのが辛いところです。

広報・IRの仕事が達成感を味わいにくい会社もある

広報・IRの仕事は、成果がなかなか認められないことがあります。

ホームページをリニューアルしたり、イメージ動画を制作したり、全国キャンペーンを行っても、販売成績が向上しないことは珍しくありません。

またそれが広報の仕事の効果測定をしっかり出来ている会社は少ないので、販売成績が伸びたとしても、それが営業部やマーケティング部の貢献として理解されることも多々あるでしょう。

投資家に良い情報を提供したとしても、株価が全く動かないこともあります。

事務や営業なら、やればやったなりの成果が分かりやすく出ます。

一方で広報・IRは、実体のない仕事、会社への貢献度は未知数ということを覚悟しなければいけません。

そして、経営陣が「売り上げに結びつかなくても広報・IR戦略は必要だ」という考えをもっていないと、広報・IR担当者はあまり待遇が上がらないかもしれません。

そういった会社の場合は、広報・IR担当者への社内の目も、冷ややかになる可能性があります。

営業や開発部門は「俺たちが社員を食わせている」と自負しています。

事務職は「事業がスムーズに回るのは私たちのおかげ」と思っています。

しかし広報・IRは、会社への貢献度を数値化することが難しい仕事です。

広報・IRを重視している見識の有る経営陣がいる会社でないと、「仕事をやり遂げた」感は、他部署の方が強いかもしれません。

自社の情報を市場へ伝える責任感の重さ

広報としてキャリアを積むと、自社の情報を伝えることによる市場への影響を広報ならではの視点から判断することが求められます。

そしてそれは場合によっては、上司や経営陣に責任を持って自分の考えを伝えて、決断を迫る必要が出てきます。

この責任の重さは、他の職種であまりないものかもしれません。

例えば大手アパレル企業の広報・IR担当者に、新聞記者が「御社の海外工場の場所や状況を教えてください」と尋ねたとします。

このときその記者が「この企業は、海外工場で現地労働者を搾取しているのではないか」と疑っているかもしれません。

つまりこの記者に海外工場の情報を提供することは、会社の利益を損ねる危険があります。

こういうとき、できる広報・IRパーソンは、上司や経営陣に「海外工場を公表することで、うちがどれだけ現地の労働者を大切にしているか、理解してもらえるでしょう」と説得するでしょう。

また、「一時的に不利益を被るかもしれませんが、情報公開に積極的であることは、必ず消費者に理解されます」といった提案も可能です。

ですので、30代の広報・IR未経験者がこの世界に飛び込めるかどうかは、「広報・IRマインド」を持てるかどうかにかかっている、といえるでしょう。

ファーストリテイリングは2月28日、「ユニクロ」ブランドの衣料品の生産を委託している主要工場のリストを公開した。

中国、ベトナム、インドネシア、バングラデシュ、カンボジア、タイ、日本の合計7カ国、146の縫製工場の名称と住所である。合計の生産規模は、ユニクロ製品の発注額の8割を超える。同社サステナビリティ部の新田幸弘・グループ執行役員は、主要工場のリストを開示する背景を、次のように説明する。

「ビジネス戦略上の重要性から、これまでは工場のリストは開示してこなかった。品質管理などの生産ノウハウを競合他社に知られないよう、情報を守りたかったからだ。しかし、もはや自分たちの戦略上の重要性ばかりを言っていても仕方がない時代になった」

引用:「もう隠しません。ユニクロが工場リスト公開」(日経ビジネスONLINE、2017年3月1日)

広報・IRに転職する前の準備

広報・IRに転職をする準備は下記のようなことがあります。

IRを狙うなら数字に強くなろう

経理・財務の知識は、特にIR業務では即戦力になります。簿記や会計の資格を取得することも有効です。

外部の人から「御社の状況はいかがですか?」と尋ねられて、決算の数字を根拠にして説明できなければ、IR担当失格です。

また、IR担当者が経営状況を頭に入れるには、自社の経理部に色々と尋ねなければなりませんが、そのときに経理の知識がないと、経理部員は教えたがらないでしょう。

転職したい業界の研究や企業研究は徹底的に

自社の製品やサービスについての知識を身に付けるのは当然のこととして、その次に取り組むべきことは「業界研究」と「企業研究」です。

業界といっても、応募先企業の業界だけに精通していればよいというわけではありません。

例えば家電メーカーの広報担当者なら、自動車業界や住宅業界、ネット業界、AI(人工知能)について詳しくなければなりません。

また、医療機器メーカーの広報は、「世界の医療の今」を知っておく必要があり、薬についても詳しい方がいいでしょう。

広報・IRパーソンは、「モノを売らなくていい」ですし「事務処理も免除」されています。

その代り、情報を取り扱うプロとして、アンテナを広く張り続けなければいけません。

営業や事務は自分の領域を深掘りする必要がありますが、広報・IR担当者は、広範囲な領域を深掘りすることが求められるのです。

未経験から広報・IRに転職する方法

転職活動をするにあたって広報求人は結構出ています。

IR(Investor Relations)に関しては上場企業の仕事になるので求人数は少ないですが、広報は比較的多く見つかります。

「広報」のみで募集しているところもあれば、「事務系総合職」や「宣伝・PR」として募集しているところもありますので、そういった求人に応募して入社後に広報のポジションを狙うといった道もあるでしょう。

入社後にやる業務が、最終的にあなたのやりたい広報業務へ繋がるかどうかは、企業によってまちまちですので、転職エージェントを活用してしっかりとヒアリングをすることが大切です。

例えば、「広報 未経験」というワードで、リクナビネクストとマイナビ転職といった転職求人サイトで検索すると以下のような結果がでます。

広報 未経験の求人検索件数 広報 未経験の求人検索件数

2つのサイトで検索したところ「広報 未経験」で該当する求人は290件と49件が見つかりました。

もちろん転職求人の大半は「未公開求人」と言われている、転職エージェントに登録をしないと検索にかからない求人がほとんどですので、実際にはこれの数倍の求人数があることになります。

未経験からの広報転職、既に広報・IRで働いている人の他社への転職を検討するのであれば、大手の転職エージェントに登録するのが一番の近道といえます。